超個人的年間ベストアルバム2021 ベスト3+α
今年も超個人的に良いと思ったアルバムたちを選択していく。
トップ3と佳作をいくつか挙げていくこととする。
3位 LICE 「Wasteland: What Ails Our People Is clear」
LICEの「Wasteland: What Ails Our People Is Clear」をApple Musicで
いろいろなところで、洋楽における今年最高のポストパンクアルバムはこれだと言ってきた。ブラックミディやスクィッドといったUKポストパンク勢に隠れてしまっているが、彼らもイギリスはブリストン出身のバンドである。
非常にソリッドで、無機質で、切れ味の鋭いポストパンクをしている。ハードコアを感じるような心地よいスリル・温度差を楽しめるし、中盤の「Serata」はポストロックのような浮遊感を見せ、アルバムのラストを飾る「Clear」ではブリストン出身らしく、ダブの影響を強く感じさせる。ビートを強めつつ、踊るものとは違う。そういった力強いロックを展開した傑作と言える。
2位 CARTHIEFSCHOOL 「CARTHIEFSCHOOL」
CARTHIEFSCHOOLの「CARTHIEFSCHOOL」をApple Musicで
3ピースバンドのデビュー作 from 札幌。3位のLICEが「洋楽における今年最高のポストパンク」ならば、このアルバムは「2021年の世界最高のポストパンク」の称号を与えるにふさわしい。
とはいえ収録曲に「bloodthirsty」というあの札幌の偉大なるバンドを彷彿とさせるナンバーがあるように、どちらかといえばハードコアやオルタナティブロックの系譜の中で語れるものに近い。ひたすらに冷めた旋律の中で、絶叫を続けるボーカルはピクシーズや54-71といったものからの影響を強く覚える。「doppo」というナンバーがあるように、文学的アプローチも強く、まさに札幌の偉大な先人たちへの現代からのアンサーだ。
12曲33分に詰め込まれた熱量が聞く者の全てを黙らせる。非常に活動も活発であり、札幌では同郷のthe hatchなどのバンドとの共演も多く、今年さらにEP「kenjimiyazawa」も追加でリリースしている。いつ大化けしてもおかしくない。いや、すでに化けている。もしまだ聞いていないのなら、今すぐに聞いてほしい2021年傑作アルバムの個人的筆頭作である
私的ベスト1位に行く前に、取り上げるべき佳作たちを取り上げる。
佳作① Optloquat 「From the shallow」
Optloquatの「From the shallow」をApple Musicで
東京のシューゲイザーバンドの満を持してリリースしたミニアルバムである。新たなベーシストを加えてからは初のアルバムになる。
開幕曲「shallow end」でとてつもない轟音を鳴らして人を惹きつけつつ、シングルカットした爽やかな「赤橙/紡ぐ日々」を収録し、マイブラッディバレンタインを思わせる「overcast」で突き抜ける。サウンドは前作「Fructose」から一気に多様になった。国内シューゲイザーにおける快作だ。
佳作② Slow Crush 「Hush」
Slow Crushの「Hush」をApple Musicで
またしてもシューゲイザーのアルバムとなってしまうが、このアルバムこそ、2021年の世界最高のシューゲイザーであると考えている。
ベルギー出身のバンドの、待ちに待った2ndアルバムだ。全編にわたってとにかく轟音。不穏な響きとウィスパーボイス。真っ向からのヘヴィロック。
耳を音で埋め尽くすものを求めるなら、今年はこれを上回るものはなかった。
佳作③ Game Center 「LOVE」
GAME CENTERの「LOVE」をApple Musicで
フジロック2020の生配信時に演奏したバンドのミニアルバム。国内インディロックではこの作品こそ至高の域にある。
ハイトーンの歌心溢れたボーカルと、ほどよく歪んだギターが心地よすぎる。どうしても自分はオアシスの「Definitely Maybe」を思い起こされる。ライブを生で観たこともあるが、実際にオアシスを感じた。
「サーカス」、「さよならサバーバン」、「あわれな魂」など、どこを切り取っても名曲だらけ。
ということで、佳作を3枚挙げた。
そして、個人的年間ベスト第1位を挙げる。
実は、年間ベスト1位は2枚ある。
1位 HIJOSEN 「発露」
1位 Goldrink 「For a heart of gold」
goldrinkの「For a heart of gold」をApple Musicで
この2枚だけは、自分の中では別格の存在だった。
まずはHIJOSENの「発露」について。
TESTCARD RECORDSからリリースされたデビュー作。メンバーがまず凄い。STRAM!、死んだ僕の彼女、PLANET WE CAN SEE、The Stillなどに在籍する超実力者陣をサポートに加えた編成で活動している。さらに、マスタリングはQUJAKUのSoushi Mizuno。
とんでもない豪華編成から繰り出されるのは、なんとも形容しがたい、最強・最恐・最凶の轟音ロック。
ポストパンク的な無機質でダークなビート、独特で虚無になる詩世界、サイケデリックな陶酔感と美、シューゲイザー的なダイナミクス。制作にかかわったすべての人たちの音楽性が融合した、カオスのようでこれ以上ないバランスで成り立った作品になっている。
文句なしの年間ベスト。
次にGoldrinkの「For a heart of gold」について。
神戸で活動するバンドの自主制作で、デジタルリリースしかしていない作品であり、彼らにとっての1stアルバム。ある日、面白い音楽がないかと探していた時、まさにその日にリリースされたアルバムがあるということで聴いて以来、心を奪われてしまった。
Built To Spill、Pinegroveといった王道中の王道のアメリカンインディロックをしており、そこにはBloodthirsty Butchersの歌詞を引用しながら届ける爆音が乗る。Explosions in the sky のような轟音スロウコアを感じさせる瞬間も多い。
とにかくすべての瞬間に隙が無い。完璧。こんな音楽を作れるバンドが日本にいて、しかも20代前半の若者たちが全くの自主制作でやってしまったということが脅威でしかない。怪物だ。
以上が、2021年の超個人的年間ベストである。