2023年 個人的ベストアルバムまとめ
Notesというものがブログ替わりに使われるようになっている中で、はてなブログをいまだに使いながら、対して需要もないまとめを作っているのは少々おかしな話だ。
そんなことを考えながら2023年のベストアルバムを選んだ。
去年は日本のインディーズバンドばかりを聞いていたのだが、結局2023年も同じようになってしまった。
「売れてるバンド、メジャーのバンドには興味が無い」なんて、背伸びをした子供みたいな精神を自分はこれからもこじらせ続けていくのだろう。
また、とてもタチが悪いのだが、サブスクでしか聞いていないアルバムも含んだ2023年ベストになってしまった。(去年の1位に選んだThe Ratelもそうだったのだが)
もちろん音源は購入できるなら手に入れたいが、レコードではなくCDかカセットが好きなのだから仕方ないと思ってほしい。
前置きが長くなったが、5枚をベストとして選んだ。
第5位 ひとひら 「つくる」
2022年はくだらない1日がungulatesから「rebound」をリリースしたことで、レーベルの人気を一気に押し上げ、日本のインディーズのオルタナティブロックを席巻するような勢いを見せていた。ひとひらのこのアルバムはその勢いを思い出させるものだった。
キャッチ―でタメとフックの効いたギターが、聞く者を捉えて離さない。
爆発力のある瞬間ももちろんあるし、「ここじゃない地獄」で聴かせるようなポストロック/ドリームポップ的なサウンドも取り込んでいて、バンドとして持っている引き出しの多さが素晴らしいと思う。
リリース元のレーベルOaikoも、このアルバムのブレイクから更に注目度が上がったのではないだろうか。このアルバムが出る前には、ひとひらのメンバーも在籍しているバンド、その感激と記録の「身の程を知れ」のリリースがあり、これも良作だった。ウェブショップで扱っている音源もhardnutsやLaget’s Jam Stackといった注目のバンドの作品をそろえている。今年は海外バンドの招致などで大活躍だったungulatesと、新進気鋭のOaiko、この2つのレーベルが一体2024年は何をしてくれるのか、とても楽しみである。
第4位 The Drin 「Today My Friend You Drunk the Venom」
Today My Friend You Drunk the Venom - The Drinのアルバム - Apple Music
オハイオのポストパンクバンドThe Serfsなどで活動しているミュージシャンのプロジェクト。Sone Recordsの入荷で知った。残念ながらLPでしかリリースが無いので音源は手に入れることができていない。
結局、こういうカオスでNo Waveなパンクは自分の大好物である。
メロディはない。不協和音、ダブなビートも聞かせる。どこまでも奇天烈で、変幻自在。
こういう音楽をいつまでも聞いていたいと思う。
最初に書いた、The Serfsも今年アルバムをリリースしていた。こちらは直球でポストパンクをしていて、それもまた面白い。
他の海外ポストパンクバンドの今年リリースされた作品だとProtomartyrやDrab Majestyなどもあったが、やはりこのThe Drinの衝撃は大きかった。
第3位 Truth Club 「Running From The Chase」
Running From the Chase - Truth Clubのアルバム - Apple Music
これもまたサブスクでしか聞けていない。そもそも、どこで流通しているんだ・・・。
どうやら日本ではLPで売っているらしいが。
一応はポストパンクバンドという位置づけにあるようだが、このアルバムは全然違った。
Boys Lifeをはじめとするエモや、スロウコア、ローファイオルタナ、そういったニュアンスが多量に含まれた、「枯れた」感じがすごく魅力的なアルバムだった。
淡々と独り言をつぶやくような歌から次々に繰り出される、メロウなアコースティックギター、ノイズや不穏、爆発して駆け抜ける疾走。
曲の中で、というよりはアルバムの中での展開が非常によく、はじめから通して聞いていて飽きない。海外のオルタナティブロックのアルバムなら、これが文句なしで1位。
日本で言えば、今年の揺らぎのアルバム「Here I stand」と同じように、ルーツミュージックを自分たちの爆発力に落とし込めた名作だと思う。
第2位 MoritaSaki in the pool 「Ice box」
Ice box - EP - MoritaSaki in the poolのアルバム - Apple Music
結局、このEPは何度聞いても飽きなかった。今年も40本以上、どこかしらのライブハウスに行ってライブを観たが、MoritaSaki in the poolは最多の4回ライブを観た。しかも1月~7月の間で。はじめて彼らのライブを見た時(もちろんこのEPがリリースされるより前)から、このEPの収録曲であるタイトル曲「Ice box」と「For Jules」が大好きだった。
まるでアイスクリームのように、ユニゾンする歌もギターもベースもドラムも、全部が溶け合ってまとまっている。
前作の1stEP「This is a portrait of MoritaSaki」は全編にわたって、逆光が常に差していて顔が見えない一人の女性を捉え続ける映像のような不思議さが魅力だった。このEPはどちらかというと、それを撮影している人物であったり、彼女と親しい「僕」という存在であったり、彼女ではない人物へスポットが当たっているようだと思う。
そういった内省的な感傷を刺激するから、このEPは魅力的であり続けるのかもしれない。
第1位 Cruyff 「lovefullstudentnerdthings」
lovefullstudentnerdthings - Cruyffのアルバム - Apple Music
今年のアルバムを選ぶにあたって、2位から5位までは順位づけに迷ったし、違うアルバムを入れようかと思ったりもしていた。
だが、この作品だけは絶対に1位だなということだけは最初から決まっていた。
なぜなら、間違いなく2023年リリースの作品の中ではこのアルバムを一番聞いていたし、この作品がリリースされたという事実はずっと自分のなかでハイライトであり続けたから。
ライブパフォーマンスやカセットを取り扱うディストロの口コミから、リリース前からとてつもない希望をリリースに対して抱いていたが、これは軽々と越えていった。
このアルバムに対してどうこうを語るのはナンセンスだと思うが、個人的にこのアルバムの魅力は「冷たさ」だ。
爆音のギターや叫びもあるが、どことなく、ずっとこのアルバムはどの瞬間も冷え切ったものを孕んでいるように聴こえている。
例えば、太宰治の小説に出てくる人物には、道化を演じていたり、弱さ・もろさを抱えた人に優しさをふりまいたりしているが、ずっと、その人物の目線では自分さえ客観視したような冷めきったところがある。
そうした心の相反性を詰め込んでいて、自分に当てはまりすぎる感性。それを誰かが音にして表現してくれた。自分にとってこのアルバムはそういう意味がある1枚になっている。
・・・こんなことを文に起こすことも、このアルバムには実際には無意味だが。
「黙ってただ聞けばいい」
これだけでこのアルバムを楽しむべきだ。ずっと自分のなかで大事な1枚になると思う。
以上、5枚を今年のベストとする。
あとは、順位が付けられなかったが、面白かったアルバムなどを簡単に書いて終わろうと思う。
butohes 「to breathe」
to breathe - EP - butohesのアルバム - Apple Music
2月に下北沢でライブを初めて見て、度肝を抜かれたバンドのEP。
このバンドについては、この音源もいいのだが、まずはライブを観てみてほしいなと思う。全員がテクニカルなプレイをしつつ、感情的に音を叩きつけてくる。
残念ながら、その後は名古屋などの近いところで見ることはできなかった。来年こそ、もう一度見に行きたい。
TEXAS 3000 「tx3k」
tx3k - Texas 3000のアルバム - Apple Music
東京のオルタナティブロックバンド。パワフルなドラムがとにかく心地よい。
これもライブがとても楽しかった。「駆け抜ける」ということをこれでもかというほど爽快にやっている。
Nabihah Iqbal 「DREAMER」
DREAMER - Nabihah Iqbalのアルバム - Apple Music
Ninja Tune からのリリース。個人的に、今年のシューゲイザー/ドリームポップの作品ではずば抜けている。ロックよりもIDM・エレクトロニカに近く、リズムラインもいいのだが、それに乗っているギターやボーカルに残響強めのエフェクトはまさに王道のオルタナ。
これら3枚も加えて、今年の誰からも需要がないまとめを終える。